ADOBE DESIGN JIMOTO in 福岡 前半戦はフィールドワークで消費。軽く食事をして後半戦へ。

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小柳さんとカードソーティングをしながらディスカッション。あまり多くのデータはとれてないので、うまく進まない。(写真は大久保さん提供)

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課題は「外国人でもわかるバス停をデザインすること」だったが、まず「何がわからないのか」を得たデータから洞察することにした。

条件として「バスの乗り降りする場所だとわかること(認識しやすい)」「なんとなく、楽しい乗り物に乗れるんだなとわかること」というものがつけられていたことから、出題者としては「バス停自体をデザインする」想定なんだなと考えた。

しかし、そもそもその上位にあるイベントのコンセプトは「地域の問題を解決する」だった。「認識しやすい」というのはコンセプトにマッチするが、「楽しい乗り物に乗れるということがわかる」というのは地域の問題なのだろうか。しかも「なんとなく」というのがついていて、その評価基準がふわっとしている。

この課題はアドバタイジングではなく、公共デザインである。乗ることが目的である人以外にとってバス移動は手段にすぎず、「楽しい」のは移動した後に起こることや、移動中に到着した後のことを想像したり、知人と一緒にのって会話することなどではないだろうか。利用者はスムーズに目的地へ移動したいのであり、バス停自体が視覚的に楽しい雰囲気を醸し出したり、エンターテインメントとして楽しめる必要はなく、バスやバス停そのものは空気のように “当たり前すぎて、あることに気がつかない” 存在、つまり過度な視覚表現は避けるべきだと考えた。

そこで2番目の条件は無視し、「バスの乗り降りする場所だとわかること(認識しやすい)」ということに絞ることにした。こちらも「乗り降りする場所」ということが本当にわからないのかが気になったため、フィールドワークによって事実をすることとした。

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前半の調査で知人への電話インタビューでわかったことは、バス停自体がわからないというよりも、聞いた名前が翻訳されてしまっている事で同じ場所だと認知していないことによるわかりづらさだった。そこで「バス停にある情報がよくわからない」という問題を付加することにした。

ここで、2人目の情報提供者(上海出身)から返事をもらうことができた。とてもいいタイミング。得られた「わからないこと」は

  • バスの乗り換えがわからない。地下鉄は地図に載せた線路全体図があるので乗り換えがわかりやすい。
  • 料金の計算がわからない。福岡のバスは統一料金ではなく距離で料金が変わる。ICカードを持っていないと、降りる際にお金を探す光景を良く目にする。料金を事前に知りたい。

ということだった。

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フィールドワークで観察した時に気がついたことも加えると、見えてきたのは以下の通り

【わかっていること】

  • 自分がどこに行きたいかがわかっている
  • 目的地が地図上のどこにあるかはかろうじて探せる
  • バス停には気づいている
  • 番号はわかる

【わからないこと】

  • 現在地がわからない
  • 正しい乗り場がわからない(数が多いからなのか、読める情報がないからなのか、調査が足りず原因は不明)
  • 時刻表に書いてある行き先が読めずわからない
  • バスの乗り換えかた(どこで降り、乗り換えるか、位置関係)
  • 支払う料金
  • 日本語の読みを翻訳した名称

【バス停でとる行動】

  • 時刻表の中から目的地の名称を探そうとする
  • 路線図は見ていない
  • その他の細かい情報も見ていない
  • スマートフォンを駆使して調べようとする
  • 紙のガイドマップも使う
  • 声をかけやすそうな人を選んでいる

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そこからまず考えたのは

  • 言語にたよらず、数字とアルファベットによる表記でわかるようにすること
  • 少々離れていてもその表記がわかるようになっていること

また、バス停の調査をしている最中にずっと考えている事があった。それは「クリエイティブ・マインドセット」でDavid Kelleyが挙げているMRIの例だった。

会社に本格的な人員、予算、サポートを期待するのは難しい。ともすれば、MRIを一から設計し直す大規模なR&D(研究開発)プロジェクトを立ち上げるのは不可能だ。そこで、彼はMRIの体験を設計し直すことに目を向けた。(出典:トム・ケリー、デイヴィッド・ケリー(2014)『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』 日経BPマーケティング)

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提案するデザインにコストがかかりすぎることによって実現可能性が低くなるというのは、地域の問題を解決することができない可能性が高まると考え「極力コストがかからない方法を考える」という条件も加え、新たな機器や表示エリアの追加を行わず、情報の見せ方で効果を発揮できるものとした。

実際にバス停案内をしたときにバスの番号で意思の疎通ができたこと、リニューアルしたバスセンターが数字のみを使って案内をするようになっていたことを踏まえ、天神エリアなどの大きなバス停に割り振られている写真にある「7A」のようなバス停IDをニーズがありそうなバス停全てに割り振り、それをバス停に大きく表示するのはどうかという案が出た。

この時点で残り1時間弱となった。

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急いでバス停を線で描きおこし、サインのリデザインを行った(正面からバス停を撮影し忘れていたので、正確な比率で描きおこせなかった)。まず変更したのは、

  • バス停IDを大きく表示すること
  • 名称を翻訳ではなく、ローマ字表記にすること
  • 正方形の大きな青(ここでは交通会社のブランドカラーを使用)のベタに白抜きの大きなID番号で統一することで、シンボル化する

これにより、各バス停に統一感が出て学習すれば遠目でもバス停が一目でわかるようになると考えた。

バス停IDを大きく扱うことで、通りの反対からでも認識できるようにした。このとき問題になったのは、一番大きな面が広告エリアであるということだった。この広告収入を無くすわけにはいかないだろうと考え、領域を狭くすることでかろうじて残す案を描いたが、広告主にサインを含めた広告を作ってもらうというのもアリなのではないかと思った。

外国人でもわかるサインと広告の両立を、広告主と市民にも理解してもらい、公共サインとしての機能を持つ広告を作ることにより、公共的なベネフィットと企業のブランドイメージをアップさせるというベネフィットを交換してもらうというアイデアだ。かなり詰めが甘いが、もっとしっかり考えると面白いかもしれない。

これだけでは「日本語の読みを翻訳した名称」しか解決できない。しかし「現在地」や「正しい乗り場(行きたいところに行けるか)」はバス停だけでは解決が不可能と考えた。「時刻表に目的地名がない」のも、限られたスペースで網羅するのは不可能だ。主要なところだけ書く、という妥協案もあるが、今は外国人観光客も名所ではなくマニアックなところに行く人たちが増えていると聞く。それを考えると主要なところだけの情報ではそのうち情報がないという問題が発生するだろう。

スペースが足りない、というのは全ての言語で名称を書こうとするからだ。そこで名称を使わず、数字やアルファベットだけで、スムーズに移動するための情報を得ることはできないだろうかと考え、乗る場所、降りる場所もバス停IDを使うことを考えた。そういえばバス自体も数字やアルファベットで管理している。それらの組み合わせで、移動のための情報が得られることができるかもしれない。

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そうやってできたのがこの表記情報だった。これは元々は、交通会社公式のアプリの表記がベースとなっている。元々は上から下に表記してあるのを横に並べることで “表記システム” とする試みだ。

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これが元々のアプリの画面。これを横並びにすることで「7A-2-990」のような「乗り場 – バス番号 – 降り場」という表記ルールとし、名称を一切使わずに移動できる仕組みを考えた(もちろんテストをしていないので、可能かどうかはまだわからない)。

あとはバスに乗る前に事前にこの情報を得てもらうだけだ。この事前情報は観光者が使おうとする道具に載せてもらうだけだ。このスマートフォンアプリはもちろん、ガイドマップには地図上にバス停IDを振っておけば、現在地もわかるし、移動先もわかる。正しいバス停かどうかは、行き先のバス停IDで確認する。そうすれば名称を正確に書く必要が無く、多言語対応の必要性がなくなるので省スペースでも網羅できる。

これで「現在地」や「正しい乗り場(行きたいところに行けるか)」も解決でき「時刻表に書いてある行き先が読めない」も解決できそうだ。

あとは「バスの乗り換えかた(どこで降り、乗り換えるか、位置関係)」「支払う料金」だが、乗り換え方は「7A-2-990」「990-80-52A」のように表記しても良いし「7A-2-990-80-52A」でも良い。バス停IDとバス番号が区別つくように、バス番号にはバスのピクトグラムを置くルールとした。

料金は省スペースに表記できるので、バス停に事前に料金を書いておくことができないか検討する必要がある。もちろん紙媒体やアプリでも取得可能にしておくべきだろう。

これで【わからないこと】としたものには全てに解答を考えたが、「IDによるシステム」を生み出してしまったため、それを周知しなければんらない。残念ながら今回はそこまで詰めて考えることができなかった。

ここまでで時間切れをしてしまい終了。

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この後のプレゼンテーションは1チーム2分だけ時間を与えられているのだが、調査の話で1分半経ってしまい、デザイン意図をうまく話せずに終わってしまい「スマホアプリの提案」だと思われてしまったようだ。これは完全にプレゼンの失敗で、準備を計算に入れていなかったため制作に丸々時間を使ってしまったのと、その後少し間があったにもかかわらず、一気に気が緩んでしまい、練習していなかったのが原因だった。(写真は やまもとさん 提供)

 

次回、まとめます

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